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ろうそくの科学 角川文庫 メロディアスライブラリー 小川洋子 藤丸由華 2016/12/11

Panasonic Melodious Library 2016/12/11

ろうそくの科学 角川文庫

作家 小川洋子 アシスタント 藤丸由華

パナソニック メロディアスライブラリー

クリスマスも近づいているので

プレゼントを探しに本屋さんに行かれる方も多いのではないでしょうか?

今日はクリスマスにちなんだ一冊を選んでみました

イギリスの科学者マイケル・ファラデー「ろうそくの科学」です

ロウソクの科学

1861年のクリスマス休暇に

ロンドンの王立研究所でおこなったファラデーの講演を記録したもので

155年たった今も世界中で読み継がれています

最近ではノーベル医学生理学賞を受賞された大隅良典教授が

子供の頃に夢中になった本ということで話題になりましたよね…

多くの人を惹きつける「ろうそくの科学」どんな内容なのでしょうか?

19世紀に活躍したイギリスの科学者マイケル・ファラデー

彼の業績は、もし現代だったら複数のノーベル賞を受賞できるほど

圧倒的なものだったようですね

ロウソクの科学

愛された科学者ファラデー

あのアインシュタインも自分の書斎に

ファラデーの肖像を飾っていたと言われています

多くの科学者に影響を与える存在だったんですね〜

「電磁誘導」や「電気分解」の法則の発見

また最近よく耳にするベンゼンという物質を発見したのもファラデーです

ファラデーは22才のときにロンドンで王立研究所で働くようになり

34才のときに所長になっています

この王立研究所は一般の人たちにも科学に興味をもってもらうため

講演を行うことでも知られていました

ロウソクの科学

「ろうそくの科学」は1861年のクリスマス休暇に行われた

連続6回のファラデーの講演を記録したものです

それをまとめたのは物理学者ウィリアム・クルックス教授です

このクルックス先生がこの本の序文を書いていまして

それがとても素敵なんですね〜ロマンがあるっていいますか…

 

「世界中のあらゆる文明にそれぞれの文明の明かりがある

人々はいろんな明かりを発見しながら文明を築いてきた

それぞれ語るべき物語をもっている」

サイゴが『炎よゆけ!』と…

かっこいいですよね〜

まるで炎そのものがこれから語ってくれかのようなワクワクさせる

科学の本ですけれども物語的な視点をちゃんともってくれている

ですから非常に入りやすい本になっています

ファラデーは科学者として優れていたんですが

その話術も素晴らしかったと言われています

実際に第1回の講演の最初の部分を読んでみると

「この講演でどんな話が出てくるかを楽しみに

お集まりくださったことの光栄にこたえるために

私は1本のろうそくを取り上げて

みなさんにその物質としての身の上話をいたしたいと思います」

とまぁこういう口調なんですね…

 

身の上話というのがというのが面白いですね…

これがクルックス先生の序文

『語るべき物語をもっている』

という序文と通じ合っていると思います

 ロウソクの科学

そしてこの時ファラデーは70才なんですけど

「若い方たちを前において講演をするのですから

私自身も一人の青年になることの特権を要求させていただきます」と

いうような文章があって

前編は若々しさ、実験をすることの楽しさ

まるで自分があらかじめ知っていることを話すのではなくて

今時分もそれを発見してる最中であるかのような

非常に臨場感のある、若々しさにあふれているという

そういうしゃべり口調です

大家が素人に向かって偉そうに講義する、という感じは少しもありません

謙虚な人柄っていうのが文章から伝わってきて

とても心地よい講演集だと思います

 ロウソクの科学

人々を魅了する講演

ファラデーの第1回の講演なんですが

彼は何本ものろうそくを持参して話をしていくんですよね…

 

まずね…ろうそくにこんなにいろんな種類があることからして知らなかった

自分はなんてものを知らないんだろうということの連続なんです、この本は…

 ロウソクの科学

浸しろうそく、これはね糸の周りに牛脂を冷やし固めて作ったもので

炭鉱の鉱夫たちが使っていたと…

あるいは沈没した軍艦、ロイヤルジョージ号から引き揚げられたろうそく

これはどういうことを意味しているかというと

長年塩水に浸かっていたのに、ちゃんと火がつくということをやって見せるんです

ですからろうそくというものが

非常に保存性が高いということなんですね…

あるいはマッコウクジラの脂で作ったろうそく

ミツバチのミツロウろうそく

私はここでね…マッコウクジラの脂なんかも原料につかわれるんだなぁと…

ろうそく、ろうそくっていうけど

ろうって一体なんだろうか?て言われるとさっぱり何にも知らなかったなぁと

思うんです

そしてなんと、日本の和ろうそくもこの講演に登場しております

1861年というと日本ではまだなんと江戸時代なんです…

そしてさらにファラデーはろうそくの光や

ろうそくが燃えるという物理現象についてお話をし

実際に目の前で実験をしていくんですね

 ロウソクの科学

そこで私が「なるほどなぁ」と実感したのは

「ろうそくには容器を持たない個体があります

その個体の姿の物質がどうやって炎のあるところまで登っていけるのでしょうか?

もしそれが個体でなく、液体だというなら

どうしてそれが固まってろうそくの形を保っているのでしょうか?」

という疑問なんですね…

 

私はこの疑問そのものに感動したんですよね

一体ろうそくって何が燃えているんだろうか?と…

  ロウソクの科学

ろうそくを観察して最初にわかることはてっぺんに見事なカップができている

くぼみができて溶けたろうそくが芯に液体が上がっていって何か燃えている…

 

「ろうそくの頭のカップは全側面を立ち上ってろうそくの外壁を冷やしている

見事に規則正しい上昇気流のお陰で形づくられているのであります

このカップをつくる性質をもたない燃料は、ろうそくの原料の資格はありません」

  ロウソクの科学

は!はぁ〜!!なるほどな〜といいますか

そんなこと考えたこともなかったなぁ〜といいますか…

その他さまざまな疑問にこたえたあと

私が深く心に突き刺さった文章としてはこういうことがあります

 

「どんなダイヤモンドが炎ほどに輝くでありますでしょうか?

ダイヤモンドの夜の光輝は、それを照らす炎のおかげでしかありません

ダイヤモンドの光は炎に照らされて輝くまではなにものでもありません

ろうそくはひとりでみずからのために輝き

また、ろうそくを作った人のために輝くのであります」

 

まるでろうそくがとても賢い人格をもったもののように思えてくる

あ、なるほど…ダイヤモンドも

ただ暗がりの中にポコンと置かれているだけでは美しくも何ともない

ダイヤモンドを美しくさせる、ダイヤモンドが隠している美を表に

私たちが分かる形に分からせてくれるのが炎なんだな〜ということが

第1回の講演で私は非常に感動的に受け止めました

 ロウソクの科学 

Q、小川さん、2回〜6回の講演で印象的な話はありましたか?

私が、あ〜なるほどな〜と思ったのは

「ほとんどすべての燃焼物質を調べてまいりますと

ろうそくのように炎を上げて燃えるものは

すべて燃焼によって水を生成することがおわかりになるでしょう」

と…水が生まれてるんですね…

 ロウソクの科学

科学の素晴らしさ

「水はどんなに姿を変えようとも

それがろうそくから燃焼によって出てこようとも

川や海からもってこようとも

完全に絶対に同一の物質だということを認めていただかなければなりません」

 

どんな形であろうと水は水なんだ…

どこにあっても、どこからくんでこようと、炎の中からでてこようと

どんな姿をしていても世界中の水は水…同じ…

 

これはね、科学の素晴らしさ、といいますかね…

これで思い出したのが昔、数学者の藤原正彦先生がおっしゃってたのが

『手の中にのるちっちゃ〜い三角形も

たとえばエベレストのような大〜きな三角形でも

内角の和は180度なんです…同じなんです』

この世界にあるすべての三角形の和は180度、同じです

ということをおっしゃったんですね…

 

この私達が住んでいる複雑な広大な世界が

このたったひとつの真理によって集約されていく…

科学ってそういうことがおこるんですよね

 

日本にある水もアマゾンにある水もおんなじだ

複雑だと思っていた、ゴチャゴチャしていたものが

たったひとつの公式にシューと集約されていく

ダイナミックな美しさを持っているのが科学の魅力ですね〜!

 ロウソクの科学

感想

この本の中には

「美しい」という言葉がたくさん出てきます

科学の本であるにも関わらず「美しい」という情緒的な感覚…

思わず実験の結果をみて

「あぁ美しい!なんてきれいなんだ」という言葉が口をついて出てくる感動!

そこが出発点なんですね…

この美しいものの正体を知りたいと思えば次から次へと疑問がわき出てくる

そしてひとつの疑問が解決されると、また新しい疑問が出てくる

『科学者というのは、疑問を解決する人じゃなくて疑問を発見する人なんだな』

と思いました

たった1本のろうそくからこんなに深い考察が次から次へとできるのか…と

自分の生かされている世界の美しさと広大さと

そして自分の小ささを再確認させてくれる本でした

 ロウソクの科学