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小川洋子 藤丸由華 2016年 マイ・ベスト・ブック Melodious Library 2016/12/25

2016年 マイ・ベスト・ブック

小川洋子 藤丸由華 

Melodious Library 2016/12/25

1年の締めくくりは、毎年恒例となっている「マイ・ベスト・ブック」

2016年に「メロディアス・ライブラリー」で取り上げた50作品の中から

小川洋子さん、藤丸由華さんの心に残った本を発表しました

まず小川さんの心に残った作品は?

呉明益 連作短編集「歩道橋の魔術師」

 

台湾文学というのは大変この番組でやるのも珍しくて

馴染みがなかったんですけれどもすんなり入っていけましたね〜

中華商場という、さまざまな商店と住居が入り混じって

それ自体が一つの街のようになっている

そこに生まれて生活して死んでいく人々のリアルな感情が

魔術師が見せる一瞬の手つきのように鮮やかにすくい取られていた

素晴らしい短編集でした

私が印象に残っているのは、魔術師が使う黒い小人の人形がね〜

その優れた呉明益さんの描写力によって命を吹き込まれたかのように

本当にそこにマジックが行われたかのように

黒い人形が生き生き表現される…非常に文章が丁寧で

描写が細やかな良い小説だったと思います

室生犀星「蜜のあわれ」

これはちょっと驚きの小説でした

室生犀星文学の奥行きの深さを思い知らされるというか

老人の性愛を金魚を相手にして描くという…

このアイデアが大成功していたと思います

女性を金魚にしたことで、いやらしさが倍増するんですけれども

どこかに上品さもあるし、ユーモアもある

室生犀星ってこんな小説も書いてたのか〜?という

何か新鮮な喜びもありましたね…

たしかに「あたい」ていう彼女(金魚)がとても可愛らしくて

でもときにしたたかで、ぬけめなくお金を欲しがったりする

しかし憎めないという、金魚ということを忘れてすごい存在感がありましたね

サローヤン「僕の名はアラム」

 

これはね、弾圧を逃れて

アメリカに渡ったアルメニア人の移民の第一世代

その彼らが胸の奥に隠している記憶がアメリカ生まれの

第2世代・第3世代アルムたち子どもによって、あからさまではなく

しかし鮮烈に映し出される…という作品でして

今思い返しても切なくなるエピソードが色々ありました

砂漠にザクロの木を植えるおじさん、メリク

一日中チターを弾いているジョルギ

すべて詩の言葉で返答するよろず屋のあるじ

社会的な苦難、政治的な苦難が

ちゃんと一個人の人間の苦難として描かれている

これこそ文学の役目だな〜と思いましたし

あらためて柴田元幸さんの翻訳のチカラ、

私達は翻訳者のチカラによって世界文学をより楽しめるな〜と思いました

アメリカのアルメニア移民という遠い世界の人の話なんだけど

自分にもちゃんと置き換えて考えることができる

人間がそれぞれ背負わなくちゃいけない苦労・悲しみというものは

普遍的なものなんだな〜環境が変わっても…人々はみんな

同じようなものを生まれながらに背負ってるんだな〜と思います

 

それでは、藤丸由華さんの心にのこった作品は? 

 獅子文六「悦ちゃん」

元気で前向きで賢くて

ついには自分の大好きな人をママにまでしちゃう!

あの力技!読み終わってスカッと爽快!!

ホントに元気を悦ちゃんからもらいました

「ママハハ」ていうのはママとハハの両方だ!っていう…名言ですよね

ケストナー「飛ぶ教室」

 

ケストナーへの読者へのメッセージ!

「不運はしっかりと目を開いてみつめることを学んで欲しい」

このいい意味で 児童文学らしからぬ言葉が胸を打ちました

大人になってから読み返すとなお発見があるという…

あぁ長い間読み継がれている文学は奥が深いな〜と思いました

少年特有の見栄を張るっていうんでしょうかね

マルチンの「泣くこと厳禁」には泣けましたよね〜あのけなげさ…

必要以上に強く見せようとして傷つく…

でも「飛ぶ教室」に出てくる大人はみんな素晴らしい人たちでした

「禁煙さん」「正義さん」

みんな幸せしてるかな〜と

今でも登場人物たちのことを思い浮かべたりします 

町田康 現代語訳 古典文学「宇治拾遺物語」

 

あそこまで爆笑させてくれる「こぶとりじいさん」の現代語訳

今までありましたか? 

町田さんのユーモアあふれるこの作品読んだら

味気ない古典の授業も、めちゃめちゃ楽しくなりますよ!

これを今読める高校生たちがうらやましい!!

そうですね〜この町田さんの訳で古典文学に触れて

本当に古典文学の面白さっていうのに気づける…

私もこれを、中学・高校時代に読みたかったなぁ〜と思いました