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小川洋子 藤丸由華 大岡信 折々のうた Melodious Library 2017/1/1

小川洋子 藤丸由華 Melodious Library

小川洋子 藤丸由華

Melodious Library 2017/1/1

あけましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします!!

折々のうた春夏秋冬

折々のうた

2017年、最初に取り上げる本は

詩人・大岡信さんの「折々のうた」です

朝日新聞に1979年から2007年まで連載されていた

人気のコラムをまとめた本です

折々のうた春夏秋冬

このコラムは

大岡信さんが短歌、俳句、川柳、現代詩、歌謡、漢詩など

数ある詩歌の中から1日にひとつ選び出し解説するというものでした

およそ28年続いた連載で紹介されたコラムは6762編

その中から春夏秋冬それぞれ68編を選び抜き

4巻にまとめて出版されています

今回は季節に合わせて「冬編」を味わっていきます

はじまったばかりの2017年

詩や短歌、俳句にもっと親しむ年にできたら…と思います

折々のうた春夏秋冬

折々のうた 冬編

目次を見ただけで年代・ジャンル

様々な作者の詩歌が載っていることがわかりますよね… 

俳句では、松尾芭蕉・与謝蕪村・小林一茶・正岡子規

自由律俳句の尾崎放哉・種田山頭火の名前が連なっております

短歌では石川啄木

詩では高村光太郎・室生犀星など

メロディアスライブラリーでも取り上げたことのある名前が見受けられます

また、山部赤人・山上憶良といった万葉集の歌がおさめられている

そうかと思えば、アポリネールといったフランスの詩人も登場します

いかに幅広い中から大岡さんが選ばれているかがわかります

これ1冊あれば、詩歌の世界を自由自在に旅できる…

というような一冊じゃないでしょうか?その中から今日は

お正月ですから、万葉集に収められているこの和歌を味わいましょう

折々のうた春夏秋冬

山部赤人の和歌

田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺に雪は降りける

これはね…

実は百人一首で親しんでるという方も多いんじゃないかな?と思います

百人一首では

田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に雪は降りつつ

というものが載っています

「山部赤人という人の

人間の行為、一般に関わる喜怒哀楽、自己反省、他社批判を

短歌の形で詠む生き方が、現代の流行りに比べて

万葉集に出てくる山部赤人のような古代人が

一途に自然界に向き合っている

おおらかな爽やかさに目覚める」

という解説を大岡さんが書かれています

たしかにここには人間は出てこないんです

人間は、ただその富士の高嶺を見上げている

という視線だけがあるだけであって

そこに映っているものは、ただ自然そのものです

とくにお正月にこの歌に接すると一層清々しいというか

自然の懐の深さを味わえる…

いったん人間世界から離れて、遠くから美しい自然を眺めて

悠々とした気持ちになれる

お正月って心なしか空も澄んで見えませんか?

ぜひお正月こそ、こういうふうにちょっと遠くに視線をもっていくと

いうことをしてみたいものです

折々のうた春夏秋冬

与謝蕪村

いざや寝ん 元日は又 あすのこと

という俳句があります

これはですね…解説によると与謝蕪村という人は

色んな種類の句がよめた

これは、ぐっとくだけて磊落(らいらく)な晩年の作で

自ら会心の作とした句のひとつであるとのこと…

さぁ寝よう

明日は元日だけど、まぁ明日は明日の話だ

お正月だからと大騒ぎしないで、まぁ寝るかな?

という句です(笑)

子どもはそういうわけにはいきませんよねぇ?

明日がお正月ともなれば

ごちそうも食べられるしお年玉ももらえる…

こんなに特別な日があるのかというワクワクした思いで

なかなか寝られない思い出がありますけど

人間、長く生きているとこういう境地に至るんでしょうかね〜

なんか別に難しいことを言ってるわけじゃないんですけど

結局、人間て年をとるとこういうもんだよな〜という

ある種の心理を、さりげなく、たった17文字の中に描き出してる

逆に、こういう俳句を作れと言われたら難しいと思うんですよね…

いい俳句っていうのは

これなら自分でも作れるんじゃないかなという気にさせながら

いざ作ろうとしたら決して作ることができないという

不思議な魅力をもってますよね…

折々のうた春夏秋冬

中島敦

中島敦は、こんな可愛らしい胸に迫る歌を書いています

ガリヴァが如何になるらむと案じつゝチビは寝入りぬ仔熊をだきて

解説はいらないと思いますけど

幼い息子を寝かしつけているんでしょう…

ガリバー旅行記を読んで聞かせてね

次にどうなるんだろう?ガリバーが小人の国で捕らえられて

縛り上げられて、心配しながら子どもは寝ていく…

子熊のぬいぐるみを抱いてね

あぁ〜こんな優しい父の歌を残して

この人は33才で早逝します…

またこのチビっていう言い方がね〜すごく深い愛情を感じますよね…

折々のうた春夏秋冬

寺田寅彦

この人の俳句が、またユニークです

人間の海鼠(なまこ)となりて冬籠る

これはね…まぁ冬ってね

とにかく寒いですから背中を丸めてくすぶったような状態になる…

そこになまこをもってくるっていうのが

たしかに、あのドブ色をしたね〜

どこが頭だか手だかわからない

ずんぐりっとしたひんやりしたナマコのイメージとどんよりした空

あるいはこたつで丸まってだらだら過ごしている人間の姿が

ナマコに重なりあうという

そこにナマコをもってくるっていうのが、ジャンプ力ですよね〜

しかもナマコは冬の季語!

ですから冬籠りとナマコと季語が重なってるんじゃないでしょうか?

でもどうしてもナマコじゃないといけないという頑固さも感じます

折々のうた春夏秋冬

内田百閒

世の中に 人の来るこそうれしけれ とはいふものの お前ではなし

内田百閒はね…戦後、麹町に住んでたんですね

庭に池を造りまして、池の中央に庵室を立てて「キンカクジ」と称した

これはね…

キンは禁止の『禁』カクはお客の『客』なんですね

お客が来るのがうっとおしかったんでしょうね…

この歌のもとには

江戸時代の狂歌にこういうものがあるんです

世の中に 人の来るこそうるさけれ とはいふものの お前ではなし

それをもじってね…もっと意地悪な

内田百閒らしく仕上げている…もうどこまでひねくれてるんだ、ていう…

これをね、わざわざ紙に書いて貼ってたというですね、門柱に

これ有名な話なんですけど

これを見てたじろぐ来客は多かったと思います

陰でこっそり覗き見てほくそ笑んでたんでしょうかね〜

愛すべき内田百閒さん…という感じです

折々のうた春夏秋冬

尾崎放哉

枯れ枝ほきほき折るによし

こういう境地で文学作りたいです

なんにも余計なこと言ってないですよね〜

枯れ枝を折る

なんか折るのにちょうどいい枯れ枝ってありますよね

無意識に山なんか歩いてて手にとってポキポキ目的もなく

折ったりするってことありますよね〜

なんの役にも立たないことをする…なんかそういうさびしさ

しかしこの『ほきほき』っていう音に明るさもある…

やっぱり尾崎放哉好きだな〜と思いました

折々のうた春夏秋冬

高村光太郎

僕にとってあなたは新奇の無尽像だ
凡ての枝葉を取り去った現実のかたまりだ

これはもちろん

その当時恋人だった智恵子さんに捧げられた言葉です

『道程』の中に出てくる詩の言葉…

礼賛が礼拝にまで達する至上の恋の宣言

こんな言葉を生涯一度でも贈られてみたかったなぁ〜

でもね…

このあと二人がたどる厳しい恋の道のりを考えれば

ここまで愛されるということは

むしろすざましく辛いことでもある…

人はとことん愛するということは苦行でもありますよね

奥村晃作

犬ワンワン猫ニャーゴニャーゴと聴くとして人間の声は何と聴くべしや

鋭すぎる指摘、お正月から考えちゃいますよね…

今日一日考えられますよね

疑問を見つけるということは、人間の大切な才能ですものね(笑)

折々のうた春夏秋冬

松本たかし

折々のうたには、星の歌もたくさん出てきます

雪だるま 星のおしゃべり ぺちゃくちゃと

かわいいですね〜

なんか寒いときのキラメキっていうのが

ホントに星どおしが会話してるような…

それこそ人間には聞こえない声で

楽しくコミュニケーションをとりあっている

そこに雪だるまがポンとある…

そのおしゃべりに雪だるまも参加しているかのような

人間だけが残念ながら加われないという

しかし俳句ではちゃんと詠める…というような

ロマンティックな句だと思います

折々のうた春夏秋冬

橋本多佳子

星空へ店より林檎あふれをり

お店に売り物のリンゴがあふれんばかりに並んでいる

そこに星空へ

うんと距離が離れているはずなのに

星とリンゴが視界の中ではまるで並んでいるようにみえる

俳句っていうのは短いからこそ

ダイナミックなものを表現できますよね

星とリンゴ

雪だるまと星

というような、本来ならば遠く離れて

並列に語れないものを、並べて書いてもなんの違和感もない

日本人というのは、ホントに面白いものを考えだしたな〜

とあらためて考えさせられます

Q、ところで俵万智さんがあとがきを書かれてますよね?

実は俵万智さんの歌も取り上げられてます

折々のうた春夏秋冬

俵万智

万智ちゃんがほしいと言われ心だけついていきたい花いちもんめ

大ベストセラーになりました『サラダ記念日』です

「ちょっと妖精的な、小悪魔的な魅力は

初期の俵万智の人気の源泉であった」

とね、大岡さん、男性なのによく女性の心がわかってるな〜

と思ったんですよね

なんか可愛らしいけど、小悪魔的ですよね…たしかに…

Q、今回「折々のうた」味わってみていかがでしたか?

はるか昔には様々な人、いろんな天皇から、詠み人知らず

防人の歌まであらゆる日本人が詠んだ歌を集めた

万葉集というのがあります

「折々のうた」というのは

現代の万葉集といえるかもしれません

集めている歌のジャンルは広くて豊かです

人間てのは生きている以上、歌が必要なんだな〜と思います

歌でした吐露できない心情ていうのがあると思います

何か心を動かされたとき、人はね…

つい歌を歌ってしまう生き物なんでしょうね

あるいは、自分で作れなくても

誰かの歌に託して、自分の心を見つめるということもできます

だから自分が作れるかどうかということ関係なく

歌ってのは、必要である…人生には…

「折々のうた」には

ふゆの他にも、はる、なつ、あきというものがあります

2017年は、日めくりカレンダーをめくるように

一日ひとつ詩歌に親しむと

豊かな一年になることでしょう…

折々のうた春夏秋冬